感情が人を動かす。心の不安と脳のメカニズム!
私たちは日々の生活で様々な感情を抱きます。喜びや安らぎなどポジティブなものもあれば、不安や怒り、恐れなどネガティブなものもあります。特に不安からストレスを感じてしまったりすることもありますよね。
不安を感じるのは自分が弱いせいだと思っていませんか?ネガティブな感情を理性で押さえ込もうとしていませんか?
不安はあなたを守ろうと脳から送られるメッセージです。無視していると気づかないうちにメンタルに不調を抱えてしまったり、気づいた時には重症だったなんてことにもなりかねません。
このような感情が何を伝えようとしているのかを正しく理解することで、不安の感じ方も変わり、ストレスへの正しい対処もできると思います。
ネガティブな感情はあなたを守る!?
不安、恐怖、怒り、喜び、安らぎ、興奮などの感情は情動と呼ばれる本能的な反応です。本能的な反応と聞くと、理性で押さえた方が良いのではないかと思われますよね?私もそうでした。人間的な振る舞いに強く影響を与えるものが理性であり、本能的な反応の情動に従って行動すると望ましくない結果を招くことが多いと考えていました。
しかし、今では行動や決断をする上で情動は理性と同じくらい重要だと思います。なぜなら情動は脳が生存率を上げるために持っているシステムのひとつだからです。
例えば、階段で足を踏み外して転びそうになった時、心拍数は高鳴り、手に汗をかいたというような経験はありませんか?
これらの反応が、不安や恐怖という感情を作っています。そしてこの感情は「怪我をしたら危険だ、生存率が下がるぞ!」という脳からのメッセージなのです。もちろん今の時代は足を骨折しても生存率に直結しませんが、野生の世界、弱肉強食の世界ではどうでしょう?足の骨を折ってしまった動物は食べ物を得ることもできませんし、他の動物に襲われるかもしれません。そうなると生存率は格段に下がると思いませんか?人間も元は野生から進化した動物です。脳はそのことを覚えているということです。つまり不安や恐怖などのネガティブな情動は生存本能からなる防御反応、正常な反応なのです。
さらに大切なことは、その正常な反応を送ってくる脳は人それぞれ違うということです。脳が違えば感じる感情の大小も違います。決して心の弱さなどではないという事を理解してください。
ネガティブとポジティブのバランス
では、なぜ不安を感じることが悪いことのように捉えられてしまうのか?
それは脳から送られる危険信号が過剰に反応してしまうせいだと私は思います。脳は視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感から信号を受け扁桃体という部分を通してストレスホルモンを分泌し、心拍数や血糖値などで身体へ反応を返します。そして五感から得た周囲の情報と扁桃体から返された身体の反応を合わせて島皮質という部分から感情を作ると言われています。この扁桃体は危険な "可能性" にも反応してしまい、心拍数などで体に知らせます。それを脳は誤解し過剰な不安を生んでしまうことがあるのです。その結果、不安障害やパニックにつながってしまい、悪い印象がついたのではないでしょうか。
扁桃体は警報器の様なもので、少しでも危険を察知すると反応してしまいます。生存本能の命を守るという点では、警報を鳴らさずに危険に直面するよりは危険の可能性にも反応し余分にでも警報を鳴らした方がよいというのは正しい反応かもしれません。しかし、不安や恐怖ばかりを感じていては行動を起こせなくなってしまいますよね。そのため、私たちは理性を使って情動を抑制したり、無視したりすることでコントロールしていると誤解しているのかもしれません。
しかし、真に使うべきは喜び、安らぎ、興奮などのポジティブな情動です。これらの情動はモチベーション、やる気を起こさせ行動を促す役割を持っています。
野生の世界で例えると、不安や恐怖に従い縄張りから出ずにいると食糧は無くなり生存率が下がります。そのため危険を冒してでも食糧を探しに行く必要があります。その行動を促すのが、食糧を見つけて得られる喜びや安心などポジティブな情動です。
つまり、不安、恐怖、怒りなどのネガティブな情動はブレーキ、喜び、安らぎ、興奮などのポジティブな情動はアクセルを担っています。この双方のバランスで過剰に反応している危険信号を抑制する方が自然だと私は考えます。
バランスを取るためのテクニック
情動はあなたを守るための脳からのメッセージであること、ネガティブな情動がブレーキであり、ポジティブな情動がアクセルであること、そのバランスが大切だということをお伝えしてきました。しかし、ネガティブな情動の方が感じやすいのは確かで、過度に不安を感じることは誰にでも起こり得ることです。これはブレーキとアクセルを同じ部分が担っているので起こると思います。なので、過度な不安を緩和するテクニックを紹介します。
1.深呼吸
強い不安を感じた時に有効なのは呼吸を意識することです。ゆっくり息を吐くことで、身体から脳へ「危険はないですよ」と信号を送ることができます。体の各器官の働きを制御している自律神経と呼ばれる神経システムには闘争や逃走に携わる交感神経と消化や心の落ち着きを司る副交感神経があります。呼吸は交感神経と副交感神経のバランスに影響します。息を吸うと交感神経が少し活発になり、吐くと副交感神経が活発になります。強い不安を感じたら何度か落ち着いた深い呼吸を意識してみてください。
その時、4秒かけて吸って、8秒かけて吐くというように吐く息が吸う息よりも長くなるように心がけてください。
2.不安を言葉にする
呼吸でも効果が得られない時、もう一つの方法は感じていることを言葉にするというものです。言葉にすることで脳の前頭葉という部分が活発になります。前頭葉は運動、言語、感情などを司る器官です。自分自身にフォーカスして体の中で起きていることを認識し感情やモチベーションに重要な役割を果たしたり、周囲で起きていることにフォーカスし計画や問題解決に重要な役割を担います。この前頭葉が活発になると、身体に危険信号を送る扁桃体を落ち着かせる効果があると分かっています。なるべく細かいニュアンスで感じていることを言葉にする練習をしてみましょう。
また、自分の感情を上手に表現できない時はカウンセリングなど第三者の力を借りることも大切です。カウンセラーが感情をあなたの言葉で描写できるように導いてくれるはずです。感情を上手く描写できるようになれば、感情に流されるのではなく俯瞰して感情と向き合うことができると思います。
自分を知ることが感情をコントロールすること
情動が人間の生存本能からなる脳からのメッセージだということをお伝えしてきました。周囲の状況から脳が判断し心拍数など体に反応を返す、その体の状態と周囲の状況を合わせて感情という形で脳からメッセージが送られてきます。その感情が行動のブレーキやアクセルの役割の一つだということもわかりました。つまり感情によって人は動かされるということです。感情をコントロールするということは自分をコントロールすることだと思います。
そのためには、感情がどのように作られ、どの様な役割を持っているのかを理解することや、正しく向き合うことが重要だと思います。無理に感情を押さえ込もうとしたり、無視したりせずに向き合える練習をしましょう。必要な時は専門的な知識を持った第三者の協力も積極的に求めましょう。心が弱いなどという決めつけで苦しまないでください。
また、脳は人それぞれ違います。脳から作られる感情の感じ方もそれぞれ違うということは忘れてはいけません。
弊社ではB-Brain診断テストという脳医科学に基づいた診断テストを用いて、脳タイプやポジティブな情動、ネガティブな情動、理性や行動によるストレス耐性を測るサービスをご提供しています。
情動が正しく反応し、脳からのメッセージを正しく理解できるようになることが感情をコントロールする第一歩だと考えます。また、健全なメンタルを形成する基盤になると思います。